梅雨明けを今や遅しと待ちわび、早くもワンコを連れて散歩やドライブという計画を立てている人も多いのではないでしょうか。楽しい夏ですが、この時期、気をつけたいのがワンコの熱中症です。
そこで、今回と次回は埼玉県の西武線小手指駅近くのコジマ動物病院の松本啓太院長にワンコの熱中症について語って頂いたお話を紹介します。
熱中症とは?
地球温暖化が影響して毎年6月から9月にかけて、熱中症で救急搬送されたというニュースをよく耳にします。熱中症とは高温多湿の環境の中に身を置くことで体温調整ができなくなり、体内温度が上がり高熱を発症したり、運動機能の低下、意識障害、果てには死に至ることもあるとても怖い病気です。
当然ですが、ペットたちも熱中症を発症します。ワンコも例外でなく、むしろ汗腺が肉球にしかない分、熱中症に弱い生き物とされています。とりわけ子犬や老犬など、体力のないワンコは、気をつけなくてはいけません。
ワンコは体内温度が上がると、舌を出して、ハァハァと小刻みに浅い呼吸(パンディング)をして体温を下げています。ワンコの体温調整方法はこれしかないので、炎天下、しかも水分が不足する状態に陥ると熱中症を発症してしまうというわけです。
とりわけ、短頭種のブルドッグやシーズー、ペキニーズ、ボクサーなどは、呼吸がしづらい構造の体つきですので、体温を下げるのが苦手といえ、熱中症には弱い犬種といえます。また、シベリアンハスキーなどの寒冷地出身の犬も熱さには弱いといえます。
熱中症の症状
熱中症を発症すると以下のような症状を引き起こします。
- フラフラする
- パンディングがいつまでも続く
- パンディングが激しくなる
- 目が虚ろになる
- 嘔吐
- ふるえ
- 発作
- 下痢
- 意識障害
このような症状が一つでも見られたら、速やかに病院に連れて行きましょう
熱中症を発症する場所
- 散歩
暖かい空気は地表面近くにたまる性質があります。しかも地表面近くは、地面から発生する放射熱がよどむ、まさに灼熱地獄状態となっています。ここで忘れてはいけないのが人間とワンコとの間にはかなりの温度差があるということです
熱中症に加え、気をつけなければならないのが、炎天下のアスファルトは、火にかけたフライパンのように熱いということです。アスファルトで肉球を火傷して病院に運び込まれるワンコも少なくありません。熱いアスファルトや放射熱が発生する時間帯の散歩は危険がいっぱいといえます。
- 車中
エアコンのきいた車中は安心!と思ったら大間違い。よくあるのがエアコンをきかせたまま車にワンコを残し、ちょっと離れたつもりだったのに、車に戻ってみたらワンコがぐったりという事故です。実はこうしたトラブルはよく耳にしているはずです。車にわが子を残してショッピングをして、戻ったら子どもがぐったりしていたというニュース、きっと皆さんも覚えがあるでしょう。炎天下でエンストを起こしてエアコンが切れた結果の事故です。車にワンコを置いてというのはくれぐれもやめてください。
- 室内
室内で熱中症に陥ることもあります。とりわけ、エアコンが苦手な高齢者宅で、室温がかなり上昇したなかで飼われているワンコが熱中症を発症するというケースもかなりの数あります。さらに、機密性の高い住宅などは、日中の室内温度はかなり高温になります。こんな室内に取り残されたワンコはたまったものではありません。また、エアコンをつけた状態でもワンコのケージが直射日光にあたってしまうような場所ではダメですよ。
次回は熱中症の対策と応急処置方法を紹介します。
北里大学獣医学部卒業を卒業後、東京都内の大手動物病院で20数年間勤務後、埼玉県小手指にあるコジマ動物病院に勤務。平成21年10月より院長に就任した。臨床経験30年のベテラン医師だ。同医院は毎月第一日曜日と正月以外は診療を行っており、苦しい、辛いといった言葉を話せないワンコの飼い主にとっては、ありがたい診療システムを誇っている。また、スタッフと飼い主が和気藹々のアットホームな医院内は、飼い主はもとより、ペットもリラックスできる雰囲気にあふれている。
現在、6人の獣医師が交代制で勤務し、オペは安全・安心の2~3人のチーム制。スタッフを積極的にセミナーや勉強会に参加させ、最新の医療技術を採り入れることにも余念がない。同医院が目指すのは、ペットを媒介とした飼い主同士が集う地域コミュニティーの拠点となることだという。