ワンコは基本的に同行避難といってはいるけど……
いざ地震が起きたときに知っておかなければならない四つのことのうち、家族との連絡方法、避難場所、そこまでのルートは前回までに説明しました。今回は、避難所での過ごし方についてです。そもそも、飼い主さんが避難するときに、ワンコはどうすればよいのでしょう。一緒に連れて行っていいのか、それともダメなのか。
環境省が「東日本大震災等の経験を踏まえて、各自治体が災害に対するペットの救護対策を検討する際の参考にしていただくため、『災害時におけるペットの救護対策ガイドライン』を作成し自治体等に配布します」とお知らせし、2013年6月に発行したガイドラインには「飼い主とペットが同行避難することが合理的であると考えられる様になってきている」と記してあり、基本的に同行避難をすることが前提とされています。
しかし、当然避難所には、ワンコが嫌いな方もいるわけです。本当に同行して大丈夫なのかどうかというのは気になるところです。
そこで、一般社団法人HAPPYわんこの理事を務めた経験を持ち、『巨大地震リアルシミュレーション その時、あなたは何をすべきか?』(永岡書店)など地震についての著作も数多く手掛けている久保範明氏に環境省の出したガイドラインと同行避難について話を聞いてみたところ「阪神淡路大震災、東日本大震災などで、飼い主とはぐれてしまったワンコが野良犬になってしまい、地域環境が悪化するケースが多く見受けられたため、環境省もガイドラインの制定となったのでしょう。もちろんガイドラインにより自治体の関心は高まり、同行避難を認める自治体も増えてきたと思いますが、ガイドラインに法的な強制力はないですし、ルールづくりがまだなところも多いです。そうなると、どうしても人間優先となり、『犬が近くにいるのが我慢できない』という意見が出て、同行避難できないということも十分に考えられます」とのこと。
阪神淡路大震災のときに現地に取材に行った際には、犬アレルギーの人や犬嫌いの人などが「こんな非常時に犬なんかにかまってられるか」と言って、飼い主さんを責め立てている姿を多く見たといいます。
最悪のことも想定して準備を
避難所で一緒に居られない場合、集団的に「一時預かり」をしてくれるボランティアなどに預けられず、家に残す、避難所から離れた場所に隔離するといった最悪の事態も想定しておかなければならないという久保氏。「その場合、行方が分からなくなってしまうことも想定して対策を取ることが大切だ」と話します。
「もしものことを考えて、マイクロチップ、ネームタグを付けるなどの対策を取っておいた方が良いでしょう。また、ほかの飼い主とはぐれたワンコたちと徒党を組んでノラ化したりすると、飼い主さんのことを忘れ、名前を呼んでも振り向いたり近寄ったりしなくなる場合があります。特徴がよく分かる写真は、必ず持って避難しましょう」
地域の関係づくりとしっかりとしたしつけで普段からのワンコのイメージアップを
もちろん同行避難ができるのが飼い主にとって一番なのは間違いありません。そのためには、一緒に避難する地域住民など、自治体と事前に話し合うことが重要になってきます。
「ワンコなど、ペットの避難への意識は自治体によってバラバラです。まずは、災害時のペットの避難をどうすればよいのかを、区役所に聞くことです。また自治会などにも参加して意見交換を前もってしておくことが大切です。いざ震災が起きて急に、ワンコを受け入れてほしいといってもなかなか厳しいですよね」
そして、同行避難を認められるためには、普段からワンコに対する地域の人たちの印象をよくしておくことが必要だと久保氏は強調します。
「よく吠えたり、噛みつこうとしたりするワンコと生活をともにしても良いと思う人などいないでしょう。一緒に暮らしても問題ない、あんないい子を一人ぼっちにさせるのはかわいそうなどと思う人が多ければ多いほど、同行避難できる可能性は高まるでしょうね」
もしかしたらしつけが何よりのワンコの防災対策となるのかもしれませんね。
次週に続きます。