この原稿を書いていた14日夜。熊本県を震源とする大きな地震が起きました。まず、このたびの震災により被害を受けられた皆さまには、お見舞いを申し上げるとともに、一日も早く余震が収まり、復興へと進めることを心からお祈り申し上げます。
今回、地震の突発性にあらためて恐怖を覚えました。随分と前から今回は、これからご紹介するペット防災指導員のことを取り上げるつもりでした。決して今回の地震があったからというわけではありません。まさかこのようなことが起こるとは、取材を開始したときには知る由もありませんでした。
今回の震災を受け、いつ起こるかわからないからこそ、今すぐにでも、人間、ペットも含めて防災に対して準備をしておかなければならないという思いを強くさせられました。本サイトでは、東日本大震災から五年が経ったことを受け、防災の特集をしました。詳しくは、バックナンバーをご確認ください。これを読んだからといって安心とまではいかないかもしれませんが、少しでもご参考にしていただけたらと思います。
災害時に一つでも多くのペットの命を守れる人に
さて、今回のテーマであるペット防災指導員についてです。
株式会社万福が5月1日、東京都港区の品川プリンスNタワーで今回初めて「ペット防災指導員」認定試験を行います。ペット防災指導員。聞きなれない名前です。一体どんな資格で、取ったら何になるのか。今回、主催している万福の横山大典代表取締役社長に話を聞いてみました。
――どのようなきっかけで、このような認定試験を行おうと思ったのでしょうか
弊社は、もともとはユニバーサルデザインサービスを提供する会社で、防災に関して言うと、障害をお持ちの方とか、高齢者、子ども妊婦さんですとか要援護者に対して、地震などが起きたときにどうすればよいのかを提案していました。
そして、防災に関して考えているうちに、東日本大震災や阪神・淡路大震災などで多くのペットが亡くなっていることを知りました。
もちろん建物の倒壊などで仕方なく亡くなったペットもいますが、そのまま家に置いていった、つまり同行避難ができずに火災に巻き込まれた、津波に巻き込まれたなどして亡くなったペットが多くいたようです。
なぜならそれまでは、多くの人、自治体が、ペットは避難所に連れていっては駄目だよと考えていたからです。しかし、幾多の震災を経験してようやく、東日本大震災後に環境省が同行避難のガイドラインを出しました。そこでは、ペットと一緒に逃げてください、同行避難してくださいとあったのです。よかった。これで、無駄な命を落とすペットが減る。同行避難への理解が広まると思っていました。
しかし、昨年の九月のことでした。台風18号による大雨により、鬼怒川の堤防が決壊し、大規模な浸水被害が起きたときに、おじいちゃんが柴犬を抱いて、自衛隊のヘリで助かった方の映像がテレビなどで流れました。それを見て、一人でも多くの人の命が救われたことと、同行避難が進んでいることに胸をなでおろしました。ですが、ネットなどでの反応を見てみると、賛否両論でした。
もちろん「良かった」という意見もあったのですが、「おいおい、犬は助けなくてもいいだろう」「一緒に避難所に行くの? マジ勘弁」といったような内容のものも多く見受けられました。
同行避難してくださいというガイドラインの観点からするとおかしい。ガイドラインが世間一般的には浸透をしないのだなと思いました。
そして、このままでは、実際に震災が起きたとき、避難所では、ペットが受け入れ可能なところとそうではないところが出てくるのは間違いありません。ガイドラインは、法的な拘束力がないからです。結局、何が避難所のルールを実際につくっているのかというと、多くの地域では実際に同じ避難所に集まる人たちがつくっている。そして、マニュアルがない地域がほとんどであることを考えると、おそらくその場にいる人たちで話し合ってということになると思うのですが、ペットを飼っている方々は多くなっているとはいえ、まだまだマイノリティー。多数決だと同行避難が通らないというわけです。
(インタビューは次回に続きます)