さて、今回で德田獣医師のインタビュー最終回です。最後は、熊本地震を教訓にして、ペットを守るために、今から飼い主さんにできることについて語っていただきます。
――災害時に向けて、このしつけだけはきちんとしてほしいと思ったことはありますか
共同生活なので、無駄吠えはしないようにしつけてほしいです。あと、ハウスのしつけはしっかりとしていないと。避難した場所がペットにとって安住の地かどうか、安心できるかどうかが掛かっていますからね。かわいそうなんて言ってちゃダメです。日ごろからしつけておかないと。意外とワンコは任せておけばできます。飼い主さんが躊躇してやらせていないケースが結構ありますね。
――同伴避難所を運営していて何か気付いたことがあったら教えてください
避難所としては、共同生活ですので、決まり事をついくっていかなければなりません。たとえば、たばことか酒はやめてもらうとか、消灯時間は何時とかきちんとしたルールを決める必要があります。そのために重要なのは、リーダーをしっかり決めることです。その点うちはやりやすかったですね。私がお山の大将ですから(笑)。もちろん毎日スタッフと会議をして意見を聞きましたが。日々状況が変わりますからね。それに対応するには、トップダウンがどうしても必要です。避難所のリーダーになるのはやはり我々獣医師しかないと思っています。衛生面や病気などを総合的に見ることができ、公平なジャッジができるのはやはり獣医師です。これからには獣医師にもリーダー的な素質が求められると思います。
――南海トラフで発生する地震が今後30年間に70%の確率で起きると言われています。熊本地震のような地震が起きる可能性がある中で、我々にできることは何でしょう
早急に行わなければならないのは、震災時に同伴避難所が多く設置されるように準備をしておくことです。同行避難は環境省も推奨していますし、熊本県としても推奨していました。しかし、ただ避難所に同行できるだけで、軒先につないでおくなど隔離される場合がほとんどです。たとえ一緒に避難所に入れても、肩身の狭い思いをしたり周りの目が気になったりで、結局は車中泊を選択した飼い主さんも少なくなかったようです。ペットを飼っているのは日本で2割と言われる中、ペットを飼っている人と飼っていない人が一緒の避難所で過ごすことは無理だと思います。だからこそ、ペットを飼っている人だけが入れる同伴避難所が設置されるよう準備をしておくことが大切なのです。
今、そういう声を上げておかないと、震災時にどこにもいけなくなりますよ。東京などでは、車をもっていない飼い主さんも少なくないと思います。熊本などでは、車を持っている人が多かったので車中泊でなんとか過ごしたという飼い主さんも多かったですが、車もなかったら、ほんとペットと一緒に寝るところがなくなるわけです。これは由々しき事態ですよ。私は今、災害時に同伴避難所が設置されるように、活動をしているところです。ぜひ、皆さんも声を上げてほしいと思います。
それと同時に、ぜひ普段からのマナー向上に努めてください。ノーリードで散歩したりうんちを拾わなかったりとかは絶対にやめてほしい。ペットを飼っていない人の多くは、ペットに対して嫌な思いを経験しています。ペットに対するイメージを上げていかないと、同伴避難所などは夢のまた夢だと思います。
――最後に震災に備えて、今から準備しておくものがあったら教えてください
キャリーケース、リード、常備薬は最低、すぐに持ち出せるようにしておくことが必要です。あと、マイクロチップはぜひ装着しておいてください。迷子札では取れてしまう可能性があります。マイクロチップを装着していないせいで、熊本地震でも多くのワンコが悲惨な目に遭いました。これはぜひお願いしたいところです。
地震はいつ起こるかわかりません。いざというときのために、今行動しておくことの大切さを德田院長から教えてもらったように思います。これからもワンズマガジンでは、德田院長の活動、防災関連の記事を掲載していくつもりです。読者の皆さまもぜひこれを機会にワンコの防災について興味をもってみてください。
【告知 読者の皆さまご協力お願いします】
現在、環境省のガイドラインなどでは災害発生時にペットの同行避難を推奨しています。その甲斐もあってか、熊本地震では多くのペットが飼い主と避難所まで同行したそうです。しかし、同行はできても、なかなか避難所内に同伴はできず、結局は、飼い主さんも避難所を利用できなかったというケースも多くあったと聞きます。
ペットを嫌いな人も避難されているところにペットが一緒に避難するということは難しいと思います。必要なのは同伴避難所の開設です。
現在、德田院長は災害時もペットという家族と安心して避難できるガイドラインの整備、同伴避難所開設のマニュアル作りを行うための署名活動を行っています。
いつ、どこで地震に見舞われるかわかりません。いざというときのためにも、ぜひ、ワンズマガジン読者の方々も署名にご協力ください。
署名活動に協力いただける方は以下のURLからお願いします。
https://www.change.org/p/いざという時-ペットも一緒に避難させて-支え合う家族が離れないために?source_location=petitions_share_skip
德田竜之介(とくだ・りゅうのすけ)
1961年鹿児島で生まれ、青春期の多くを熊本で過ごす。父が医者でなおかつ動物に囲まれて育ったこともあり、小さい頃から獣医師に自分はなるものだと思って育つ。麻布大学大学院獣医学修士課程修了後、関東で勤務医として腕を磨き、1994年に竜之介動物病院を開業する。また2004年には九州動物学院を開校し、後進の育成にも努めている。TBS局系列で放送されている「情熱大陸」で取り上げられ、9月23日には、衆議院第一議員会館で開かれる『動物と人の未来を考えるサミット~動物虐待のない世界へ~』の中で「大震災発生その時ペットは?」と題した講演を議員らの前で行うなど、現在さまざまなところから注目を集めている。