今回も引き続きコジマ動物病院の松本院長に熱中症の対策と応急処置について教えていただきます。
熱中症対策
- 散歩や屋外の場合
6月から9月までの暑い時期の散歩や屋外での運動は軽めにしましょう。夏の間は、日課の散歩も陽が昇る前のほんのり明るくなった時間帯、遅くとも陽が昇って間もない早朝がお勧めです。散歩コースは芝生や草などの緑が多い、舗装されていない道がベストです。中には早起きが苦手だから夕方に散歩という人もいるでしょうが、夏場は陽が沈んだあとでもしばらくの間、地表面は放射熱で熱い状態が続いますからワンコにとっては過酷な散歩ということになります。それならばとっぷりと暮れてからと考える人もいるでしょうが、夜間の散歩は、足元も暗く、ワンコが異物をなめたり、口にしたりするのが見えなかったりしますし、交通事故や防犯上の心配もあります。ここはがんばって早起きするのが得策と考えましょう。どうしても日中にという時には、ワンコ用のシャツなどを水に濡らして着せてやると効果的です。さらに飲み水だけでなく、身体を冷やすための水も携帯するようにしましょう。
屋外でワンコを飼っている場合は、ハウスは一日を通して日陰にあるのが理想です。どうしても陽が差すようであれば、日よけなどで直射日光が当たらないようにしてあげましょう。また、リードでつながれたワンコの行動半径内にも木陰を作る工夫も必要でしょう。また、一定時間ごとに水を飲ませたり、水をかけてやったりするなどの水分補給も大事です。
- 室内の場合
ワンコを室内で飼っている場合、おろそかになりがちなのがケージの設置場所です。よくあるのが時間帯によって直射日光にさらされるというケース。どうしてもという場合はカーテンでさえぎるなど工夫が必要です。また、夏場はワンコの体力も落ちていますので室内環境はエアコンで調整してあげるのが一番です。とりわけブルドックなど短頭種や寒冷地出身の犬種は昼夜問わずエアコンで室内温度を保ってあげるのがいいという専門家もいます。
- 車内の場合
窓を開けで風を取り込むのもいいですが、やはりエアコンで車内温度を涼しく保ってあげるのが一番です。なかにはトイレを気にして水分補給を控えめにしている人もいますが、熱中症対策には水分補給は欠かせません。長時間のドライブではこまめに休憩を取れば、水分補給やトイレの問題が解決しますし、車外に出して上げることでワンコのストレス解消にもなります。
厄介なのがサービスエリアの売店にワンコが入店できない場合です。ワンコを車に残すのはとても危険です。前回も紹介しましたがエアコンをフル稼働させていたつもりがエンストで冷房が切れてしまったケースも少なくありません。また、夏の日差しにエアコンの能力が追いつかず車内温度が上昇する恐れもあります。こうした場合、めんどうですが同乗者の一人がワンコと車内、あるいは車外の日陰で待機し、順番で食事を摂るようにするといいでしょう。もしワンコと1対1のドライブという場合は、ワンコと過ごせるスペースで食事をテイクアウトするというのもあります。
熱中症の応急処置
ワンコに熱中症の症状が見られたらすぐさま、涼しい部屋に連れて行き、扇風機などで体温を下げてあげましょう。体温を計ってみて40度を超えるようであれば、体全体を濡れタオルで包んでやる、あるいは水をかけるなどして熱を下げてやる必要があります。水が飲めるようであれば水を飲ませましょう。体温をこまめに計って40度を下回わったら、濡れタオルなどに包むなどして、病院に連れて行きましょう。
ここで注意したいのが重度の熱中症の場合です。体温が上がりすぎたことで体温中枢が支障をきたし、一時的に体温が下がることがあります。それで安心していて、時間をおいて再び熱を計ったときに高熱を発症しているケースがあります。熱中症は決して軽視できません。発症したら病院と心得てください。
北里大学獣医学部卒業を卒業後、東京都内の大手動物病院で20数年間勤務後、埼玉県小手指にあるコジマ動物病院に勤務。平成21年10月より院長に就任した。臨床経験30年のベテラン医師だ。同医院は毎月第一日曜日と正月以外は診療を行っており、苦しい、辛いといった言葉を話せないワンコの飼い主にとっては、ありがたい診療システムを誇っている。また、スタッフと飼い主が和気藹々のアットホームな医院内は、飼い主はもとより、ペットもリラックスできる雰囲気にあふれている。
現在、6人の獣医師が交代制で勤務し、オペは安全・安心の2~3人のチーム制。スタッフを積極的にセミナーや勉強会に参加させ、最新の医療技術を採り入れることにも余念がない。同医院が目指すのは、ペットを媒介とした飼い主同士が集う地域コミュニティーの拠点となることだという。