ワンズマガジン

ダニの予防と対策1


 巷でマダニ被害が騒がれています。そこでワンコの命を脅かすダニについてコジマ動物病院の松本慶太先生に話を伺いました。

ダニは身近に潜んでいる

 夏の暑さから逃れようと高原に出かける人が少なくありません。そこで気をつけたいのが虫さされ。とりわけ、マダニの被害は社会問題として取り上げられるほど深刻化しています。今年もすでに死亡ケースが報告されているものの、実はマダニについてはまだまだ分からないことも多く、被害の程度、症状、治療方法などは確立されていません。はっきりしているのはマダニが吸血性のクモ類の寄生虫で、公園や河川の草むらなど、私たちの生活圏に潜んでいることも珍しくなくなっているということです。

 マダニは木々の葉っぱの先端にひそみ、近づく人や動物の熱や震動を察知して皮膚に取り付いてきます。ひとたび宿主に取りつくと皮膚の下に頭を突っ込んで吸血します。かなり大胆な攻撃ですが皮膚に食いつかれた当初は、マダニ自体の体は非常に小さく、発見しにくいのが特長です。それだけに何日も皮膚にくっついて血を吸い続けることになります。たっぷりと血を吸ったダニは数倍にも大きく膨らみ、見た目にもすぐにわかるほどに成長します。皮肉にも成長して大きくなったことでワンコの毛に隠れて寄生していたマダニが発見できたというケースもあるほどです。

 マダニがワンコに寄生すると血を吸うだけでなく、ダニの中にいる微生物のリケチア感染や、熱病の発症、さらにはバベシアという赤血球を壊す病気を発症することもあります。免疫力が衰えた高齢のワンコにとっては重病につながることもあるので充分に注意を払いましょう。大切なワンコを守るためには、ダニ、蚊、ノミの被害予防は、このシーズンには欠かせない大切なケアといえます。

ダニを発見しても無理やり取らない

 ワンコにダニが食いついているのを発見して、慌てて取り除こうとしても大失敗という報告が数多く寄せられています。ノミと違って、すんなりとは取り除くことはできません。ダニはまさにワンコの皮膚に喰らいついているといった表現ができるほど、鋭い歯を皮膚につきたてています。それだけでは飽き足らず、自ら溶液を分泌して皮膚に接着させています。

 従ってダニを無理やり取り除こうとすると、ダニの身体だけがちぎれて取れ、頭は皮膚に食いついたままになってしまいます。やっかいなのがちぎれた頭が見えにくいということです。そのまま放っておくと皮膚が炎症を引き起こしグジュグジュな状態になることもあります。そんな悲劇を避けるには、あらかじめの備えが大切になります。ダニを取り除くには、真ダニピンセットという専用の器具があります。まずはそれを手に入れて、使い方をしっかりシミュレーションしておきましょう。ただし、余りにも深く食いついている場合は、切開して取り除かなければならないこともありますので、状態によっては獣医院など専門家に任せたほうが無難でしょう。

次回はダニやのみなどの害虫予防について紹介します。

松本慶太院長プロフィール

 北里大学獣医学部卒業を卒業後、東京都内の大手動物病院で20数年間勤務後、埼玉県小手指にあるコジマ動物病院に勤務。平成21年10月より院長に就任した。臨床経験30年のベテラン医師だ。同医院は毎月第一日曜日と正月以外は診療を行っており、苦しい、辛いといった言葉を話せないワンコの飼い主にとっては、ありがたい診療システムを誇っている。また、スタッフと飼い主が和気藹々のアットホームな医院内は、飼い主はもとより、ペットもリラックスできる雰囲気にあふれている。
 現在、6人の獣医師が交代制で勤務し、オペは安全・安心の2~3人のチーム制。スタッフを積極的にセミナーや勉強会に参加させ、最新の医療技術を採り入れることにも余念がない。同医院が目指すのは、ペットを媒介とした飼い主同士が集う地域コミュニティーの拠点となることだという。


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